探偵の調査力?

最近よく探偵事務所や興信所の広告・WEBサイト等に「高い調査力」「調査力が高い」などを売り文句にしている例が見られるようになりました。

探偵業界も競争が激しく、全国に数多くある探偵事務所の中から自社に依頼してもらうために様々なアピールを考え出すわけですが、正直、相談者や依頼者に対して「誠実さに欠ける」例があちらこちらで見受けられるように思います。

その中の一つの例が「高い調査力」「調査力が高い」という言葉です。

高い調査力とはいったいどういうことなのか

「高い調査力」、もしくは「調査力が高い」。

どちらも同じ意味ですが、業界内部で働く者からしてみればどちらもモヤモヤする言葉です。

多くの探偵事務所・興信所がこの「高い調査力」というものを売りにしようとしていますが、はっきり言って現在の探偵業界でそれぞれの探偵事務所の調査力を計る方法など存在しません。

そもそも探偵事務所・興信所には探偵業法による「守秘義務」があるため、個々の事務所の案件データや調査の内容が外部に知れ渡ることはなく、もちろん検証のために公平な第三者に提供されるようなこともありません。

あるとすれば、その探偵事務所の失態で情報を漏えいしてしまった時や、警察や裁判所など公的機関に提出を求められた時くらいでしょう。

つまり高い調査力が客観的に証明される可能性はほぼなく、どの事務所も悪く言えば自称自画自賛であり、良く言えば定番の売り文句として使用しているだけに過ぎないことになります。

中には「揃えている機材が優秀」ということで自社の高い調査力は事実であるとアピールする探偵事務所も存在します。

しかし、違う見方をすれば調査機材の優秀さだけしかアピールできないというのは、より重要である「探偵=人」が行うこと、調査プランの立て方や実行力、尾行や張り込みの技術などの調査力は客観的には示せないと言っているようなものなのです。

営業実績はイコール調査力ではない

また「営業実績=調査力」であるかのように主張する探偵事務所や興信所も見られますが、調査が下手すぎても長年続けることはできないので一定の説得力はあります。

しかし、以前から探偵業界で生き残るためには、調査力よりも「宣伝力」の方がはるかに重要なこととなっています。

何と言っても、探偵業界は資金力と宣伝力にものを言わせて営業を続けていくことができてしまう業界なのです。

これまで多くのトラブルを起こしてきた探偵業者や、集団訴訟で訴えられた探偵社でも大手や老舗のように営業を継続できています。

つまり「調査力があるから営業実績があるわけではない」のが実情です。

また、創業が古く世代交代のできていない探偵事務所の場合、近年の時代の流れに対応できていない可能性すらあります。

調査員を多く使い、調査力が高いと言っているケースがある

探偵の調査力を証明することは非常に難しいわけですが、一つだけ確実に言えることがあります。

それは現場に投入する調査員が多ければ多いほど調査力が上がるということです。

「一人ではできないことが二人ならできる」といったことが調査現場では頻繁に起こります。

調査員個人の技量は別にして、人数が多ければ多いほど絶対的に調査力は高まるのです。

ですので「調査人数を増やして調査力を高くすることはどの探偵事務所でも可能なこと」であって、全く特別なことではありません。

調査人数の多さをいかにも付加価値のように「うちは調査力が高い」とアピールしている探偵事務所には気を付けてください。

人を多く使えば使うほど人件費がかかるのが世間の常識です。

その結果、依頼者が払う調査料金は他社より高額となります。

「依頼者から高い調査料金を取るために、調査人数を多くして調査力が高くなっている状況を利用しているだけ」です。

逆に一般的な探偵事務所は、調査料金・人件費・案件の内容のバランスを考え現場の人員を2名~3名程度に設定しており、むしろ調査人数を無駄に増やさないようにしていると言えます。

どんな調査案件でも現場の調査員を5名も6名も使っている探偵事務所は、別に調査力が高いわけではなく「高い調査料金を取ることが目的である」ということにご注意ください。

最も悪質なケースはどれか?

上記に調査力の実態についていくつかの例を挙げてみましたが、こういったことは相談者や依頼者となる素人の方々には全くわからないことなので、高い調査力とのアピールを鵜呑みにしてとんでもない探偵事務所に依頼してしまうということが無きにしも非ずと言えます。

もっとも悪質なのは、調査人数を多く使うことによって調査力が高いとし、その分高額な調査料金を払わせるケースではないでしょうか。

繰り返しになりますが、「調査人数を多くすればどんな探偵事務所でも調査力を上げられる」にもかかわらず、他社より調査力が高いとしているわけです。

その他の場合は、どんなにアピールしても実際に調査を行った結果でしか証明ができない、というだけに過ぎません。